本日は沖縄県30代のFTM、Aさんにインタビューさせていただきました。
出会いに関するご相談で、ラインからご連絡してくださいました。
お会いすると物腰が柔らかくて、聞き上手なAさん。
学生時代や、手術のことなども伺ったのですが「もう忘れちゃって」と笑いながら、楽しくお話をさせていただきました。胸の手術をした後に、自分でハサミで抜糸をしたというびっくり体験談も聞かせてくれましたよ。
それでは、Aさんの人生ストーリーをどうぞご覧ください。
小学生で自分の子供を持てないことを知った
Q 違和感を感じたのはいつ頃ですか?
記憶のある保育園児の頃には「おかしいな」と感じていました。
でも周りの反応をみて、これはあんまり言わない方がいいと感じ、胸にしまっていたんです。
でも小学校、中学校と過ごして、特に女性用の制服には大きなストレスを感じました。
小学校3年生の時に、オランダの事例で性同一性障害の特集をしていたテレビ番組を見て、「自分はこれなのか」と思いました。自分と愛する人との遺伝子を受け継ぐ子供を持てないということを知り、ショックを受けました。
動き出した高校生
高校の頃に、このままストレスを溜め続けていると、自分のアイデンティティーが崩壊するのではないかと危機感を感じるようになりました。
そして、自分でタウンページから病院を探して、一つ一つ電話をして相談をしました。
ある病院の先生と出会い、一人で病院へ行きテストと検査を受けて、性同一性障害という診断がついたんです。
病院の先生が一人、社会人の当事者の方を紹介してくれました。
その方には一度しかお会いしませんでしたが、胸を目立たなくさせるために包帯をぐるぐる巻く方法や、ナベシャツについて教えてもらい、助かりました。
私は大学からは生まれ持った心のままで男性として生きていきたい、と思っていたので、先生の勧めもあり親兄弟、身近な友人に話をしました。
そして、大学が受かった段階で、入学前に学部長に相談をしにいくと、理解を示して下さり、男性としての入学を認めてくれました。内心、男性として入学したいと申し出ることにより、入学が取り消されるのではないか、と心配していましたので、ホッとしました。
大学は、事前に両親や友人に相談して決めていた新しい名前の学生証の使用や、警備員用のシャワー室を使わせてくれたりと、とても配慮をしてくれて助かりました。
ホルモン治療を始めた大学時代
在学中、インターネットで検索して見つけた病院でホルモン治療を始めました。
また、途中で胸の手術を埼玉で行いました。名前の正式な変更も、裁判所で手続した覚えがあります。
そして社会人2年目辺りでタイへ渡航し、子宮摘出の手術をしました。
もう、昔のことだから詳しくはあんまり覚えてないんです。
Q ご家族はAさんの生き方を受け入れてくれましたか?
そうですね。理解はしてくれましたが、母は自分のせいじゃないかと責任を感じてショックを受けている様子でした。
でも、もともと私自身が親の言うことをあまり聞かないタイプなので、やりたいようにやろうと思いましたね。
ホルモン治療も手術も親には心配かけたくなくて言いませんでした。
家族に治療をした事後報告もしたかどうかも、、うろ覚えですね。もう忘れました(笑)
Q 一人でタイへ渡航し手術をすることは不安ではありませんでしたか?
あまり不安はありませんでした。リュック一つだけでタイにいきました。
タイで出会った人がいるんですけど、その方は彼女と二人でタイに手術をしに来ていました。
この方が心配性で、荷物も多くて。
緊張してて動揺している彼を見ると、逆に自分は安心できました。その方は3つ年上で、社会人の方で人生で困っている話など、いろんな話を聞かせてもらいましたね。
お二人はすごく良いカップルだったので、日本に帰っても会いました。
アテンドに怒られたり、自分で抜糸をしちゃった体験談
胸は見るだけで、在るだけでストレスだったので、胸を取ったあとはそのストレスが無くなり精神衛生上よかったですね。
外見的な大きな変化は無かったので、親にもそんなに驚かれなかったと思います。
タイに渡航したときの話ですが、術後にはいろんな規制があるんですけど、それを守らずにアテンドの方に怒られましたね。
タイで手術した後に、具合がとても悪くなって気持ちが悪かったんですよ。
それでシャワーを浴びたり、看護師さんがメンソール系のアロマオイルでマッサージをしてくれる方を呼んでくれたんですよね。その対応ですごく楽になりましたが、アテンドの方にそれはいけないと怒られました。
あと、埼玉で胸の手術をした時に、手術の部位がすごくムズ痒くて、自分でチョキチョキと抜糸してしまったんですよ(笑)
Q ええーー!自分で抜歯するとは!それは一部だけですか?
いいえ、全部です(笑)
普段から痒さに弱くて、我慢できなくてむずむず感が嫌で、自分でチョキチョキしたんです。
でも創部がちゃんとくっついていない段階で抜糸してしまったので、見栄えは悪くなってしまいました。
先生の言うことをちゃんと守るべきだと思いました。
皆さんも気をつけてください。
戸籍変更をして快適な生活
手術をして戸籍変更できたことが一番よかったです。病院で、名前を呼ばれた時にザワザワとする感じがなくなったのが快適ですよ。
また、名前を変えても性別が「女性」のままだと説明するのが大変なので、こういったストレスが軽減されたのが良いですね。
行政手続きや就職活動、病院で気まずい思いをしなくていいのが、気持ちが楽です。
今思えば、気にしすぎだったのかもしれませんが、なんとなく居心地が悪かったのは事実です。
恋愛のお話
Q 始めてお付き合いをしたのはいつでしょうか?
はい。小さい頃、好きになった人はたくさんいましたが。お付き合いをしたのは高校生の時でしたね。
始めてお付き合いをしたとき「私のこと好きだよね?」と言われて「あれ?別に好きじゃないけど」と言う感じでしたが、付き合うことになったんです。
男性になってお付き合いをした人数は七名くらいですね。多いですか?
学生や20代の頃は出会いも多かったし、あんまり深く考えていなかったかもしれません。
別れる大変さを知りましたね(笑)今は、少し臆病になっているのかな。
これからは自分がちゃんと好きになった方とお付き合いをしたいと思っています。
でも今は仕事柄、全然出会いがないんですよね。
周りから紹介やお見合いの話もあるのですが、気軽に「はい、お願いします」とはなりにくいです。試しに会うというのもした方がいいのか、自分でもどうしたらいいのかよくわかりません。
紹介を受けた後の、人間関係なども考えてしまいますよね。
Q どのような方に惹かれますか?
知性的な方に惹かれます。話をしていて自分の恋愛対象になるのか、どうかがわかるんですよ。
どう言ったらいいのかわからないのですが、本当に少しお話をしたら、感じるものがあるんです。
30代は全く恋愛していないのでもうわからないのですが。
好きな人ができたり、気になる方がいるとワっとなり、すごくダサくなる気がします。
何を話したらいいのかもわからずないという感じになりそうです。
いま悩んでいるFTMさんへのメッセージ
これまで過ごしてきた中で、様々な心苦しい事もありました。
同時に、自分の存在をどのように考えればよいのか、途方に暮れたこともありました。
そんな時は、本を読んだり、音楽を聴いたり、運動したりして、気を紛らわしていた記憶があります。
時が経つごとに、悲しさや辛さは私の中で小さくなっていきました。心の痛みが全て消える事は無いかもしれませんが、今では諦めなのか、受け入れなのか、昔よりは生き易くなっていると感じます。
何をメッセージしてよいのかサッパリ分からず申し訳ないのですが、今痛みを感じている方がいるとすれば、私もFTMなので、その痛みを少なからず理解できます。
今悩んでいる方の、これからの未来に、何かいいことがあるといいな、と思っています。
今一番幸せを感じるとき
何が一番かよく分かりませんが、穏やかな時間を過ごしている時。
美味しいものを食べている時。
休みの日に明るい時間帯からベッドでゴロゴロ好きな映画を見ている時、
仕事中社内に笑い声が聞こえたり、楽しそうな雰囲気がある時
近しい人の笑顔を見る時などに幸せを感じます。
最後に
Aさん、たくさんお話聞かせていただきありがとうございました。
一人一人には人生のstoryがあり、主人公は自分です。私たちは願い、行動したら自分のなりたい姿になれるし、近づくことが必ずできます。
自分を信じて、まっすぐ突き進むAさんには力強さを感じました。今はお仕事も順調でとても幸せそうでしたね。パートナーは募集中とのことですが、素敵なAさんに惹かれる方は必ずいます。
今もし、どこかで悩んでいる方にこのAさんの思いが届きますように。
もしこれから手術を検討している方がいたら、術後の創部がむず痒くても、自分でハサミで抜糸してはいけないですよ。皮膚がくっつくまでは、一時的なムズムズ感があるので冷やすなり、先生に相談してみてくださいね。
形が崩れると先輩Aさんからのアドバイスです。
出会いに感謝し、今後もAさんのご活躍を願っています。
皆様、最後までご覧いただきありがとうございました。
あなたのお話も聞かせていただけませんか?
「自分もお話してみたい」
「勇気をもらえた」
と何か感じていただけたなら、あなたの人生ストーリーも教えていただけませんか?